【リフォーム業者が教える】リフォーム工事中の追加費用の発生は当たり前なのか

よく聞くリフォームトラブルの一つに「工事途中で追加の費用が必要と言われた」というのがあります。

実はリフォーム工事において追加工事の発生は珍しい事ではありません。

逆に、工事前に「追加工事は絶対にやめてくれ」と伝えると、お客さん自身が損をする事になる可能性もあります。

今回は

リフォーム工事において追加工事は当たり前なのか。追加工事を発生させない約束をすると損をする場合がある。

これらを解説していきます。

追加費用が発生するのはどんな時?

リフォーム工事において、実際に追加費用が発生するケースはどのような物があるでしょうか

例えば、

フローリングを張り替える工事を行ったが、古いフローリングを剥がしてみたところ、下地の木が腐っており交換が必要になった。
ユニットバスの工事を行ったが、古い浴室で水漏れしていたらしく土台の木が腐って無くなっていた。
屋根瓦の葺き替えの工事を行ったが、古い瓦を撤去したところ、下地の木が腐っていた。
家の外構工事を行ったが、庭や家の周りを掘ってみると建築当時の物と思われる廃材やコンクリートが大量に出てきた。
キッチンのリフォームを行ったが、古いキッチンを撤去したところ水道管が錆びて腐っていた。
などが考えられます。
水回りだと本来濡れないはずの部分が「水漏れの影響で濡れており木が腐っていた」というケースが多いです。
また、解体してみると建築当初の工事が杜撰だったり図面と違ったりして、予定通りの工事が行えないケースもあります。
追加費用の発生の共通する事は「当初の見積もり段階では確認出来なかった部分」です。
見えない部分の見積もりに関しては、どれだけのベテランの業者であっても、正確に見積もりする事は不可能だと言えます。
追加費用の発生がどの程度の頻度で発生するかは、家の構造や工事規模などによるので一概には言えませんが、
  • 築年数が古い
  • 水回りが近い箇所の工事
  • 湿気が溜まりやすい家
  • 解体する箇所の多い工事
  • 木造住宅

これらの条件が重なった場合には、かなりの高確率で追加工事が発生すると思っておいた方がいいと思います。

補足

ベテランの担当者であれば、事前に「もしかしたら見えない部分で追加工事が必要になるかも?」と予測をたてる事は出来ますが、どれだけ経験を積んだ担当者だろうとも、事前に完璧に把握するのは不可能です。

追加費用の発生は悪徳業者?

追加費用を請求された。

リフォームトラブルの事例でよく聞く言葉なので、追加費用の発生=悪徳業者であると思われている方もいるかもしれませんが、先ほど説明したように追加費用が発生する事はリフォーム工事においては珍しい事ではありません。

では、なぜ追加費用の発生でトラブルになるかと言うと、業者の説明不足です。

  • 事前の打ち合わせ段階で「追加費用が発生する可能性がある事」をきちんと説明しない。
  • 追加費用が発生した事を伝えずに工事を進め、工事が終わってから追加費用の話をする。
  • 追加費用が発生した事は伝えたが、追加の工事内容と費用を書面で出さない。

このような業者側の怠慢があってトラブルに発展する事がほとんどです。

リフォーム工事において、追加費用がする事は珍しい事ではない。
築年数の古い木造の水回り工事などではかなりの確率で追加費用が発生する。
それがトラブルの元になるのは、業者側の説明不足。
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最初から見積もり金額に入れておけないの?

追加費用が発生するのが珍しい事でないのなら、

「最初から、想定し得る最大の金額を見積書に出しておいて、もし追加費用が発生しなかったらその分を最終金額から引いてくれればいいのでは?」

このように考える方もいらっしゃるかもしれません。

確かに金額が増えるからトラブルになるのであって、最終的に見積もり金額が減るのならトラブルにはなりにくいとは思います。

このように、最初から見積もり金額に追加費用を入れておく項目として「予備費」というのがあります。

予備費

例えば100万円の工事があったとして、最初に予備費という項目で10万円分を見積もり金額に入れ、110万円の見積もり金額にします。

そして、もし追加費用が出なければ10万円は工事金額から減らし、最終金額は100万円になります。

5万円分の追加費用が出たのなら、残りの予備費5万円を引いて、最終金額は105万円になります。

いいシステムだとは思うのですが、採用している業者は少ないです。

理由は、

予備費を超える場合があるので、結局変わらない

先ほど、

「追加費用の発生で、当初の見積もり金額以上の金額になるとトラブルの元になる。」

と言いました。

なので「最初から「予備費」という項目を見積もりに入れておこう」というシステムなのですが、それでも想定を超える追加費用が発生する場合があります。

そうなると、結局予備費を含めた見積もり金額を超えてる事になるので同じことになってしまいます。

むしろお客さんからすると、わざわざ予備費という項目がある以上、仮に追加費用が発生しても予備費を超える事はないと思ってますので、余計トラブルの元になりやすいです。

補足

100万円の工事で、予備費として10万円を入れて110万円の見積もりがあったとします。

しかし、想定外の状況になり

「追加工事として30万円が必要になり、予備費を差し引いても20万円足りない」

このような事態になると、お客さんからすると

「最大でも110万円なんだろ?何のための予備費だ!」となり、余計トラブルになります。

予備費を入れたとして、絶対にその範囲内に収まるのかは結局は分からないのです。

予備費をちゃんと最後に精算するかは分からない

本来使わなかった予備費は、計算して見積もり金額から引いて請求しなくてはならないのですが、そこの計算は業者任せになってしまうので、本当は使ってなくても色々と理由をつけて「使い切りました」と言われても、本当なのかどうかお客さんには分かりにくいという問題があります。

納得できるような明細を提示してもらえればいいのですが、その明細の価格も適正な内容と価格なのかも判断しにくいです。

結局、本当に必要だったのかどうか分からない「予備費分」を含めた全ての金額を請求されたりして、ここでまたトラブルの元になる可能性があります。

予備費の項目は、メリットとデメリットがあるので採用しているかどうかは業者次第。
小~中規模のリフォームの場合にはあまり採用される事は少ないと思われます。仮に予備費が見積もり金額に含まれている場合には、「どのような状況で、どのように使われるのか」を明確にしておいた方がいいです。
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絶対に追加費用を出さないように業者に伝える事はやめた方がいい

お客さんからすると、追加の費用は無い方が当然いいと思います。

ですが、それを契約時に

「絶対にこの金額で終わるならサインするけど、工事中に追加で費用がかかるなんて言わないよね?」

などと言うのは辞めた方がいいです。

本来そう言われても担当者は、

「追加費用がないようにはしたいですが、見えない部分でどうしても出てしまう可能性はあります。その場合には必ず作業内容と追加費用の説明をします」

と、答えなくてはいけないのですが、

「分かりました。追加工事はないようにします」

と答えてしまうとお客さんにとっても良くない事が起きます。

実際にあった話

知り合いの職人さんの現場に手伝いに行った時の話です。

ユニットバスの交換工事だったのですが、ユニットバスを解体したところで、水道管が著しく腐食していました。

強く触ったら折れてしまうような状態です。

本来であれば、絶対に替えた方がいいです。ユニットバスの下になってしまう場所なので、ユニットバスを解体した時でないと直せないからです。

それを知り合いの職人が現場担当に電話で確認すると、

「今回の工事では追加の費用は一切発生しない」とお客さんと約束してしまったようなのです。

面倒事を避けた担当は、見なかった事にして本来の工事のみを指示しました。

著しく腐食していた部分を直さなくても、本来予定していた工事は終わります。

確かに約束通り追加の費用は発生しませんでした。

しかし、2~3年後にその部分から漏れて、結局お客さんとトラブルになったようです。

「何でその時に言ってくれなかったんだ。言ってくれれば少しの費用で直ったんだろ?」

というお客さんの言い分も身勝手だなとは思いますが、

面倒事を避けた結果、このようなトラブルを招いた担当者にも責任はあると思います。

補足

このケースでは、結局水道の修理をするのに30万円ほどかかったようです。
ユニットバス工事の時に、一緒に追加工事としてやっていれば2~3万円ほどだったと思います。

せっかくキレイになったところをまた工事

先ほどの過去の事例でもそうなのですが、同時にやっておけば簡単に直せる工事も、一度工事を終わらせてしまった場合にはせっかくキレイにした部分を壊さないと直せない場合があります。

例えばフローリングの張り替えを行った際に、下地の木が腐っていたとします。

その時点で直せば、規模にもよりますが追加の費用がかかったとしても、大きな金額にはなりません。

しかし「追加の費用は発生しない約束」をして工事をしていた場合には、その状況を教えてもらえない可能性があります。

そして、数年後に直さなくてはいけない状況になってしまうと、せっかくキレイになったフローリングを剥がさなくてはいけなくなります。

そうなると結局損をするのはお客さん側になってしまいます。

追加費用が発生して欲しくないお客さんの気持ちは分かりますが、「絶対に追加費用を発生させるな」と業者に言ってしまうと、その時の工事は無事に終わっても、数年後に大きなトラブルになる可能性があります。
追加費用を絶対発生させるなと業者に伝えるのは辞めた方がいいです。

追加費用をぼったくる悪質な業者もいる

お客さんが「追加工事は発生させるな」と事前に業者と約束するのは、工事が始まってから「追加の費用が必要」などと言ってぼったくる悪質な業者を警戒しての事ではないでしょうか?

残念ながら、そのような業者は実際に存在します。

とりあえず安い工事金額で契約をし、工事が始まってから高額な追加費用を発生させ、全体の工事金額の帳尻を合わせる、もしくは最終金額が相場よりも高い請求をするぼったくり業者です。

このような業者がいる事も事実ですので、警戒する気持ちは分かります。

見積もり金額が安すぎる場合には注意

安い見積もり=悪質な業者という訳ではもちろんありませんが、相場よりも安すぎる見積もりを提示してきた場合には注意して下さい。

工事が始まってから大幅な追加工事を迫ってくる可能性があります。

もちろん企業努力によって、安く工事を提供してくれる業者もいっぱいあります。

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必ず相見積もりが必要

見積もり段階では追加費用が発生するかどうかは分かりませんが、リフォーム工事の良し悪しは業者選びで決まります。

1社で決めずに、複数の業者から必ず見積もりをとり、相見積もりをして下さい。

今はインターネットで工事の見積もりは簡単に行えます。是非ご検討ください。

補足

相見積

複数の業者から見積を取る事(見積書を提出してもらうこと)を相見積(あいみつもり)と呼ぶ。「合見積」とも表記することがある。口頭では短く「あいみつ」と表現されることがある。

中略

複数の業者から提出させることによって、ようやく購入者側は業者の提示したものを相対的に比較検討するようになる。最もお値打ちな価格を提示したり、似たような価格でも明らかに質(仕様や量など)が良い見積りを提出した業者を選定することで、購入者側は予算を引き下げたり出費を抑えたり、あるいは同価格でも より良い内容のものを購入することができるというメリットを享受できるのである。

引用元:Wikipedia

確かに高額な追加工事を迫る悪質な業者もいるので、警戒するのは悪い事ではない。
しかし「追加工事が発生した=悪質な業者」という訳でもないので、結局のところ最初の業者選びで全てが決まる。
必ず複数の業者から見積もりを取る事が重要。
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まとめ

追加費用について説明しました。

確かに追加費用は発生しないならそれに越した事はないと思います。

また、追加費用の発生=悪徳業者なのか?と思ってしまう気持ちも分かります。

ですが、それでも業者の立場からすると、

「事前に見えない部分を正確に見積もるのは不可能だし、絶対追加費用を発生しないという約束で工事をするとお互いに不幸になる」

このように思います。

今後のリフォーム工事の為に、少しでもこの記事が参考になって頂ければ幸いです。