「蛇口からの水漏れ」「トイレが詰まった」「水道管の破裂」などで業者を呼んだ結果、手抜き工事や高額請求された。
というニュースがここ数年で増えています。
業者とのトラブルの回避策として、「水道局の指定業者」に依頼をするように呼び掛けられています。
今回は
水道局の指定業者とは?
水道局の指定業者とは正確には「指定給水装置工事事業者」と言い、水道事業者(各地域の水道局)から給水区域内において給水装置工事を適正に施行することができると認められ、その指定を受けた者をいいます。
指定給水装置工事事業者制度は、給水装置工事により設置された給水装置が、構造材質基準に適合することを確保するため、水道事業者が、その給水区域において給水装置工事を適正に施行することができると認められる者の指定をすることのできる制度である(水道法第16条の2)。
引用元:公益財団法人給水工事技術振興財団
生活に直結し、衛生上の問題からも水道工事を行う業者は最低限の知識や技術が必要な為に「水道法」により、水道管の工事は指定業者しか行ってはいけないと定められています。
指定を受ける為には国家資格保有者が必要
水道局から指定を受ける為には、最低限一つの事業所に一人「給水装置工事主任技術者」という国家資格を保有している者が必要です。
給水装置工事主任技術者は
- 給水装置工事に関する技術上の管理
- 給水装置工事に従事する者の技術上の指導監督
- 給水装置工事に係る給水装置の構造及び材質が水道法第16条の規定に基づく政令で定める基準適合している事の確認
- その他厚生労働省令で定める職務(水道法第25条の4の3項)
- 水道事業者との給水装置工事に関する連絡調整を担うこともある。
引用元:公益財団法人給水工事技術振興財団
など、水道に関する工事現場が一定の技術水準が確保されているか、工法・材料などが適正かどうかを監督・管理する責任があります。
一定の要件を満たさないと指定を受けられない
水道局から指定を受ける為には、「最低限一つの事業所に一人、給水装置工事主任技術者を任命しなくてはいけない」など、いくつか要件があり、それらの要件を全て満たさないと、指定を受ける事は出来ません。
要件の中には、
- 3年以上の実務経験
- 適切な道具・機器を保有している事
- 欠格要件(破産者や2年以内に水道法に違反していたり、認定取り消しを受けたなど)に該当しない事
などがあり、この基準は全国一律で決まっています。
指定を受ける為の基準は全国で一律で決まっており、不正をした場合には認可の取り消しを受ける事もある。
水道管の修理は指定業者しか行えない
蛇口の交換やトイレの部品交換などの軽微な作業は、指定業者以外でも行う事が出来ますが、水道管の修理・新設などの場合には必ず指定業者が行う必要があります。
指定業者が水道工事をする事が水の供給条件
水道法
第 十六条の二 水道事業者は、当該水道によつて水の供給を受ける者の給水装置の構造及び材質が前条の規定に基づく政令で定める基準に適合することを確保するため、当該水道事業者の給水区域において給水装置工事を適正に施行することができると認められる者の指定をすることができる。 2 水道事業者は、前項の指定をしたときは、供給規程の定めるところにより、当該水道によつて水の供給を受ける者の給水装置が当該水道事業者又は当該指定を受けた者(以下「指定給水装置工事事業者」という。)の施行した給水装置工事に係るものであることを供給条件とすることができる。
水道法では業者を指定する事により、水道管の構造や材率が政令で定める基準に適合することを確保するように書いてあります。
そして水道事業者(水道局)は、指定業者が施工した給水装置(水道設備)であることを供給条件とすることが出来るとなっています。
これは、「指定業者が工事した水道管であれば水を供給します」と読め、指定工事店以外が水道工事をする事を認めていません。
最悪の場合、水の供給が止められる
水道法 第 十六条の三では以下のように書かれています。
水道法
第 十六条3 前項の場合において、水道事業者は、当該水道によつて水の供給を受ける者の給水装置が当該水道事業者又は指定給水装置工事事業者の施行した給水装置工事に係るものでないときは、供給規程の定めるところにより、その者の給水契約の申込みを拒み、又はその者に対する給水を停止することができる。ただし、厚生労働省令で定める給水装置の軽微な変更であるとき、又は当該給水装置の構造及び材質が前条の規定に基づく政令で定める基準に適合していることが確認されたときは、この限りでない。
特にこの部分で、
「指定給水装置工事事業者の施行した給水装置工事に係るものでないときは、供給規程の定めるところにより、その者の給水契約の申込みを拒み、又はその者に対する給水を停止することができる。」
と書かれており、もしも指定業者以外が水道工事を行った場合には、最悪の場合水の供給を止められてしまう可能性があります。
補足
最後に「当該給水装置の構造及び材質が前条の規定に基づく政令で定める基準に適合していることが確認されたときは、この限りでない。」
このように書かれているので、指定業者以外の業者が行った工事でも、基準に適合していれば供給が止められる事は無いとなっています。
ですが、問題はどのように基準に適合しているのかを証明するかです。
万が一問題になった場合に、施工業者が責任を持って証明をしてくれればいいのですが、連絡が取れなくなったなどの場合には、自身で資料を集めて証明する事になる可能性があります。
漏水の証明書も発行されない
自分では気が付かないうちに、土の中などで漏水が起きていて、水道局から「漏水の可能性あり」と指摘を受ける場合があります。
一般的に、自分の責任では無い漏水に関しては、修理が終わった後に「漏水証明書」を提出する事により、漏水した分の何割かを返金してもらえる場合があります。
しかし原則として水道管は「指定業者」しか工事してはいけない事になっているので、指定業者以外の業者に工事を依頼した場合には、漏水証明書の発行をしてもらえない可能性があります。
指定業者以外の業者が水道工事をすると、最悪の場合には水の供給を止められる可能性がありますので、必ず指定業者に工事を依頼しましょう。
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本当に指定業者なのか?
インターネットやチラシなどで「水道局指定業者」と書かれているのを見た事がある方も多いと思います。
しかし、それは本当なのでしょうか?指定業者は本当だとしても、自分の地域の水道局の指定なのでしょうか?
指定を受けるのは水道局の管轄するエリアのみ
ホームページなどで「水道局指定業者」と書いてある事は多くても、具体的にどこの水道局から指定を受けているのかまで詳しく書いてある業者は少ないです。
実はここに大きな落とし穴があります。
Aという水道局から指定を受けたとしたら、水道工事をする事が出来るのは、あくまでもAの水道局が管轄するエリアだけです。隣のBやCという水道局が管轄するエリアでは水道工事をする事が出来ません。
具体的な地名で説明しますと、神奈川県に川崎市という場所があります。川崎市は東京都や横浜市に挟まれている形になっているのですが、仮に川崎市の水道局(川崎市上下水道局)から指定を受けたとすると、水道工事をする事が出来るのは川崎市上下水道局が管轄するエリアだけです。
隣の東京都や横浜市では、水道工事をする事が出来ません。
そこまで大きな会社ではないのに、関東一円や関西一円対応エリアとしている業者がありますが、はたして全ての水道局の指定を受けているのでしょうか?大いに疑問です。
もしもそのような業者に依頼するのであれば、自分の地域の水道局の指定を持っているのかを必ず確認して下さい。
補足
一つの業者は一つの水道局からしか指定を受けれないという決まりはありません。
先ほどの川崎市で指定を受けた業者の例えで言うなら、隣の東京都や横浜市で新たに指定を申請し、認定されれば工事する事が可能です。
指定は5箇所でも10箇所でも、上限無く受ける事が出来ますので、対応エリアが関東一円や関西一円の業者も、全ての地域の水道局で指定を受けているのであれば問題はありません。
ですが、関東や関西一円の全ての指定を受けようとすると相当な労力と費用がかかるので、余程大きな会社でないと現実的とは思えません。
指定業者は簡単に調べられる
指定を受けている業者は、自分の地域の水道局に問い合わせれば簡単に調べられますし、直接問い合わせなくてもインターネットを使えば簡単に調べられます。
例えば東京都の場合「東京都 水道局指定工事店」などで検索すれば、東京都水道局が公表している工事店一覧のページが出てきます。
(参考サイト 東京都水道局 東京都指定給水装置工事事業者一覧)
「水道局指定工事店」とホームページに書いてあっても、どこの水道局から指定を受けているのかを書いていないと意味がない。
そのような業者に依頼するのであれば、自分の地域の水道局から指定されているのかを確認する必要がある。
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まとめ
最近、水道修理業者とのトラブルが増えており、「水道局から指定を受けた業者に工事を依頼しましょう」とよく言われます。
当サイトでも他の記事でそのように書いていますが、「水道局から指定を受けた業者が工事出来るのは、その水道局の管轄のみ」という情報はあまり他のサイトでは出ていなかったので記事にしました。
手抜き工事やぼったくりの被害から身を守るという理由で、指定された業者に工事を依頼する事はもちろんの事なのですが、そもそも指定されていない業者が水道工事は行ってはいけませんし、最悪の場合には水の供給が止められますのでご注意下さい。
水道修理をするにあたり、この記事が少しでも参考になって頂ければ幸いです。