お客さんが自身で材料などを用意し、取付を業者にお願いする事を「施主支給」と言います。
リフォーム工事をする際に、安く済ませる方法としてネット上などでおススメしているのを見かけますが、本当にお得なのでしょうか?
リフォーム業者の立場からすると、施主支給は
施主支給とは
施主支給について簡単に説明します。
施主支給(せしゅしきゅう)は、新築やリフォームなど、住宅設備を必要とする場面において、施主が工事業者に対して、住宅設備などを提供する事である。施主が自ら工事業者に対して住宅設備を提供するため、通常の工事よりも安くなる場合があるメリットがある。反面、対応がしっかりしていない業者である場合、売り切りの形となってしまうため、実際の大きさや排水管の位置などによって、対応していない住宅設備を誤って購入してしまうというリスクが発生する。また、トラブルも発生する可能性もある。この為、施主は十分な知識を必要とされる。
引用元:Wikipedia
商品をお客さん(施主)が商品を自分で用意し、業者に支給して取付工事を行ってもらう事を「施主支給」と言います。
インターネットなどでは、安くリフォームを行う方法として多く紹介されていますが、Wikipediaにも書かれているように、施主支給を行う為には十分な知識が必要になります。
商品選びは難しい
施主支給するに当たり、大きく2通りのパターンが考えられます。
- ご自身で器具を選び、取り付けをお願いする方法。
- 業者に工事の見積をお願いし、出してもらった見積書の商品の品番をみて、同じものを自信で購入して取り付けをお願いする方法
ご自身で器具を選び、取り付けをお願いする方法。
現場により、取り付けが可能な物、不可能な物があります。
仮にトイレで考えてみます。
欲しいトイレを選びインターネットなので購入します。
そこで業者に取り付けのみをお願いし、業者側も了承したとします。
さて、工事当日に業者が古い便器を撤去し、新しい便器の梱包を開けたところで、新しい便器が現場に合わず設置不可の場合どうしますか?
- 新しい便器は梱包を開けてしまったので返品は不可能
- 業者も来てもらって作業開始してしまっているので、おそらく作業代を請求される
- 古い便器を戻してもらわなくてはいけないが、戻すのに部品代が別にかかる可能性がある。もしくは、業者も戻す前提でキレイに外さないので、戻す事自体が不可能の場合も。
どうですか?ゾッとしませんか?
いやいや、商品を買う時にちゃんと調べて購入するから大丈夫。
そう思ってる方、状況によってはプロでさえ、つけられる商品に悩む事があるのです。
商品選びはそんなに単純じゃないんです。
仮に商品一式を全て業者に任せていれば、同じ状況でつけられないとなっても、
- 梱包を開けてようが開けてまいが、間違えている商品代なんて払う必要なし
- もし一旦元に戻すのであれば、出張費含めた費用一切払う必要なし
- 責任もって元に戻すか、その日のうちに付けられる商品を手配するよう強く要求できる
商品選びから依頼しているのであれば、「間違いのない商品を用意する事」も業者側の責任で行う為、仮に間違えた商品を発注したとしても、その全責任は業者側が負います。
少なくても、プロの業者に商品選びを任せた方がスムーズに工事が進むのは間違いないです。
業者に工事の見積をお願いし、出してもらった見積書の商品の品番をみて、同じものを自信で購入して取り付けをお願いする方法
商品選びが難しいなら、見積をお願いして業者に商品選びをしてもらってから、同じ品番の物を用意したら良いんじゃない?
確かにそうすれば、商品がつけられないというトラブルは99パーセント回避できるかもしれません。
実際、この方法をお薦めしているサイトも何度も拝見しました。
しかし、プロが選んでも100%商品が現場で設置出来るとは限りません。
1%程度の確率かもしれませんが、商品の設置が出来ない場合があります。
その際に、業者が選んだ商品なんだからと、業者の責任にしますか?
業者の立場からしてみると、
- 多少なりとも労力を使って商品を選んだ
- しかし、その商品はお客さん自身で用意する事になった。(商品に対しての利益なし)
- 利益は無いが、商品に対しての責任は負わされる
こう考えると少し酷に感じませんか?
もし、業者に一式で任せていれば、同じ状況になったとしても、それは業者側が100%責任を負います。
何故なら商品選び~設置までが契約上の工事内容だからです。
しかし、施主支給の場合には契約上の工事内容は設置のみです。
一般論で考えると、設置不可の場合には業者側に100%の責任を追及するのは難しいのではないでしょうか。
また、「現場を下見して商品を選ぶ」事にも経費と労力はかかります。
業者に商品を選んでもらってから、「同じ商品を自分で用意します」と言うのはマナー的にあまり良くありません。自分で商品を用意したいのであれば、その旨をあらかじめ伝えておきましょう。
過去のトラブル事例
ここからは実際に私自身で体験したものや、同僚などから聞いたトラブルをご紹介します。
ケース1
給湯器の交換を行った現場がありました。
お見積り書を出したところ、お客さんが某最安値を調べられるサイトで同じ品番を調べ、こちらの見積もりよりも商品の値段が安い事を指摘してきました。
同じ値段まで下げるように要求されましたが、それは無理だと伝えると、
「では、この商品をネットから買うので取付だけお願いしたい」
と提案されました。当時勤めていた会社では施主支給OKだったので、その提案を了承しました。
工事が終わり数日後の朝、出勤して携帯電話をみてみると、こちらのお客さんから何件も着信がありました。
あわてて掛け直すと、
「昨日の夜からお湯の調子が悪い」
と伝えられ、いそいで現場に駆け付けました。
現場で確認したところ、設置作業に問題があるとも思えず、メーカーに問い合わせると商品側の不良品の可能性が高い事が分かりました。
しかし、メーカー側の修理が3~4日後になってしまうとの事をお客さんに伝えると、
- 数日もお湯が使えないのは困る。お風呂に入れない。
- 新品の商品がすぐに壊れるとは信じられない。施工に問題があったのではないか。
- 直るまで変わりの給湯器を付けるか、新品に交換して欲しい
このように要求されましたが、
「こちらが用意した商品がすぐに壊れた場合には、③の対応を取るが、施主支給の場合には今回の責任は取れない。今すぐの対応を求めるのなら、販売店かメーカーに直接ご自身で交渉して欲しい」
これが、当時勤めていた会社側の見解でした。
1日中揉めた後に、最後は納得してもらいましたが大変な一日でした。
また作業の不具合ではなく、商品自体に不具合が出た場合には自分でメーカーや販売店と交渉しなくてはいけない。
ケース2
トイレリフォームの依頼で、工事内容は、
- トイレ・タンク・ウォシュレットの交換
- 壁紙・床のクッションフロアの張替
見積書を提示すると、トイレ商品は同じ品番の物をネットから買った方が安いので自分で用意するとの事でした。
工事当日の朝、現場へ行くとお客さんから、
- 昨日届くはずの商品がまだ来ていない。問い合わせると早くても今日の夕方以降と言われた。
- 今日の工事を延期して欲しい。
- 延期が難しければ、内装工事だけ今日行い、トイレの交換は後日お願いしたい。
このように伝えられました。
業者側の見解は、
- 内装職人も水道職人も手配していて、既に現場に到着しているので延期をする場合には、今日の分は別に費用を頂きたい。
- 内装だけを行い、トイレ交換を後日行う場合でも、後日分の工事は当初の予定に入っていないので、別に費用を頂きたい。
施主支給で数千円安くするつもりが、別途数万円お客さん側の負担が増えました。
ケース3
マンションの床フローリング張替の依頼です。
依頼内容は、
- フローリングの張替をお願いしたい。
- フローリング材は知り合いの業者から安く譲り受けて既に用意してあるので、施工だけをお願いしたい。
工事自体は問題なく終わったのですが、数か月後に
「遮音性に問題が出た」
との連絡があり、ご自宅で話を聞くと、フローリング材の遮音性がマンションの規約違反だったそうです。
実は、マンションによっては下の階に音が響かないように、
この規格以上の遮音性能で床を作ってください
という事が規約で決まっています。
業者側としては、既に商品を用意してあったので、当然その遮音性能を満たしている物を用意してあると思って、特に確認はしませんでした。
お客さんがの主張は、
- 依頼をした時点で遮音性能について確認しなかった。
- 実際に施工する際にも、職人さんからの確認もなかった。
- もう一度張り替える必要があるのだが、工事代についてはそちら側で負担して欲しい。
業者側の見解は、
- 既に商品は用意してあったので、当然基準を満たしている物だと思った。
- 商品の性能についてはこちらで用意した物で無い以上、保証は出来ないし、確認する義務もない。
- 再工事の代金は、安くする事は出来るがこちらの責任では無いので、赤字になるような金額では出来ない。
1か月近く話し合った末に、再工事を行ったようです。
施主支給により安く済ませるはずが、2回分の工事になり、相当な負担が増えたケースです。
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施主支給にメリットってある?
ここまで、施主支給のデメリットをご紹介しましたが、他のサイトでも語られているようにメリットもあります。
- ネット最安値を調べて自分で買った方が業者から買うよりも安い。
- 業者が取り扱っていない輸入商品なども選べる。
ネット最安値を調べて自分で買った方が業者から買うよりも安い。
確かに金額だけ比べれば安く購入できる可能性は高いです。
何故なら、リフォーム業者から買うということはリフォーム業者の利益が含まれているからです。
ですが、その利益の中には責任を取るという意味も含まれています。
「利益分を業者に払うから、その代わり責任も取ってね。」というのが業者から商品を購入する場合。
「利益分は払いたくないから、責任は自分で負担します。」これが施主支給です。
そう考えると、施主支給により数十万円安くなるならともかく、数千円~数万円程度であれば、施主支給を行うメリットは少ないと思います。
業者が取り扱っていない輸入商品なども選べる。
海外の製品は、取り扱っていない業者が多いです。
ですので、こだわりの海外製品を取り付けたい場合には施主支給という選択肢もあると思います。
施主支給のメリットではありますが、これもリスクが大きいので注意が必要です。
そもそも何故海外製品を取り扱っている業者が少ないのでしょう?
- 商品についての問い合わせが言語の問題もあり困難
- 輸入品は納期が不安定
- 不具合が起きた場合のメーカーサポートがない
- 部品の発注に数か月かかることも
- 取付の際にサイズなどの規格が違うので現場加工が必要になり工事代の見積もりが難しい
これらの理由が考えられます。
施主支給の場合には、これらの責任を自分で負わなくてはなりません。
よほどの理由がない限り海外製品の施主支給はお勧めしないので、メリットとしては弱いと思います。
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施主支給を断る業者が増えてきている
お客さん側にとってみるとリスクはありますが、確かにメリットもあります。
ですが、業者側にとって施主支給はデメリットしかありません。
業者側にメリットは無い
施主支給をした場合の業者のデメリットは、
- 商品を選んでも、それに対しての利益はない
- 商品に対しての利益は無いのに不具合が出た場合には対応を求められる
- 商品の傷などについても対応を求められる
- 商品に対しての責任が無いのにトラブルに巻き込まれる
これらが考えられます。
ハッキリ言って、業者側にとって施主支給はメリットが一つも無いのです。
施主支給を断る業者が増えてきた
インターネットの普及により、品番さえ分かれば商品を買う事が誰でも簡単に出来るようになりました。
それに伴い、施主支給を求めるお客さんもドンドン増えています。
しかし、実際に統計を取った訳ではないのですが、それを断る業者も増えてきている印象です。
断る理由は、先ほども書きましたが「メリットが一つも無い」のに「トラブルに巻き込まれる」可能性があるからです。
私が以前に勤めていた会社も、トラブルが多かった為に途中から「施主支給は断る」方針に変わりました。
施主支給を完全に断らないまでも、「施主支給の場合には工賃が2割増し」など、工賃を変えている会社も多いです。それくらい業者にとってみたら、施主支給はおいしくない仕事なのです。
施主支給を考える前に一度相見積もりを
施主支給を考える前に、一度相見積もりをとってみる事をおススメします。
何社かに見積もりをとってもらえば、施主支給をした場合とそこまで大きく金額が変わらない会社も出てくるはずです。
施主支給をするよりも安い見積もりが出てくる事は稀ですが、あまり大きく金額が変わらないのであれば、施主支給をせずに全て業者に任せてしまった方が一番確実であり、リスクも無いです。
断る業者や、工賃が割り増しになる業者も増えてきている。
値段が大きく変わらないのであれば、施主支給をせずに業者に任せてしまった方が安心。
まとめ
施主支給について説明しました。
商品選びについてや、過去の事例をみても分かるように、施主支給は商品に関しての責任も考えなくはいけません。
また、責任の所在について理解していないお客さんも多く、不具合が出た時に全て取り付け業者の責任にされる場合もあり、業者側からしてみると施主支給は「リスクが大きい」ので断る業者も増えています。
施主支給はメリットがあると勧めている人もいますが、はっきり言ってリスクの方が大きいです。
当記事の結論としては、
「余程の理由が無い限り、施主支給はおススメしません」
この記事が少しでも参考になって頂ければ幸いです。